高島自然農法研究会【お野菜・ハーブ・米粉菓子/高島市】

今回訪ねたのは、滋賀県高島市にある"高島自然農法研究会"(野菜担当の中地朝子さん)。畑があるのは高島市マキノ町。メタセコイア並木が有名な地域だが、少し離れると違った景色が顔をのぞかせる。周りは山に囲まれ、川が流れる。少し足を伸ばし車を走らせると、琵琶湖もあり桜の名所として知られる海津大崎もある。 


みんなで集まれるハナレを 

訪れてまず案内してもらったのは、平屋の隣にあるキッチン設備のついた小さなハナレ。主に野菜の加工や米粉のケーキなどを焼く際に使用されている。かなり暑い日だったこともあり、着いて早々自家製梅サワーを出してもらった。そこからお話を聞くことに。 (残念ながら写真がない,,,)

高島市上開田地区。冬場には1メートル以上の雪が積もるこの場所は、65歳以上の高齢者が50%をゆうに超える限界集落でもある。近年はこの高齢化の問題だけでなく、害獣被害もしばしば報告されている。畑を囲む山からは害獣よけの発砲音が定期的にこだまする。

縁あって上開田に住むようになった朝子さんは、少しでもそんな地域のために盛り上げることはできないか、という想いを持つようになった。

そこで昨年、しばらく使われていなかった住まいの横のハナレを加工所として活用することに決めた。野菜の加工以外にも米粉を使ったお菓子づくりなどもおこなっている。地域の人に開けた加工所として、ハナレを活用していきたいと考えているが、まだまだこれから。とのこと。



身をもって知っているからこそ

幼い頃から慢性的なアレルギーやアトピーと戦ってきた朝子さん。今でも卵や小麦、牛
乳、肉、米などに反応が出たりする。日ごろから食に対して慎重にならざるを得なかった経験から、同じ境遇の人にも「食べるものの選択肢を増やしたい」という想いはひと一倍強い。

どんなひとでも安心して食べられるように。育てている野菜の栽培方法やハナレで加工品をつくる際の材料選びにも気を遣い、出店時にはグルテンフリー・ヴィーガンのものを並べている。



学生時代に訪れたアフリカ 

そもそもどうして農業に行き着いたのか。自身の健康から”食”との接点はあっても、農業には接点などなかったはず。それなのになぜ、しかも1人で足を踏み入れることができたのだろう。至った経緯を知りたいと思い、少し遡って学生時代の話を聞くことにした。 

もともと大学時代は現代社会学を専門に、国際問題について学んでいた朝子さん。次第に紛争や貧困の問題など、多くの話題が上がるアフリカに興味を持つように。一度は自分の目で現地の様子を見てみたい。ようやく機会を得て、そんなアフリカを訪れることとなる。



踏み入れて気付いたこと

ーどうやったら彼らを助けられるのだろう。自分ができることはなんだろうか。

そんな想いで行ったはずだったが、実際は違った。子供たちのキラキラ輝く目と健気な笑顔に元気をもらい、みんなで賑やかに囲む食卓に喜びを感じた。

何より衝撃を受けたのは、食べた野菜の美味しさだった。


「あの人らえぇ野菜つくるんすよ。味は濃いし、むっちゃおいしい。」 


 土の違いなどはあるけれど、農薬も機械もない中でこんな野菜が育つのかと、心底驚いた。 



拭えない危機感 

アフリカで食べた野菜の味。みんなで囲んだ楽しい食事。果たして幸せとはなんなのか。帰国後、抱いていた危機感は国際問題ではなくむしろ国内、日本の問題に向くことになった。 

貧しくて不幸なのは、アフリカではなく日本ではないか。必ずしも物資の豊かさが心の豊かさに繋がらないということをひしひしと感じさせられた。日本が変わらないといけない。その思いはどんどん大きくなる。 



変えるなら食べもんから 

日本は先進国の中でも、特に食の問題が深刻である。戦後から急激に広まった環境に負荷かける農業、低い食料自給率、担い手不足。大量に輸入する農作物は、その地の水を枯らしてしまったり環境破壊に繋がる要因をつくる。働く人が恐ろしく低賃金でフェアではない場合も考えられる。

食を支える農業に目を向けた朝子さんは、大学卒業後そのまま農業生産法人に就職。当の本人もまさか農業の道を志すとは思っていなかったらしく「やってしまいましたわ」と健気に笑う。しかしそんな言葉とは裏腹に、福島、大阪、滋賀など複数の地で農業を学び、現在この高島という地で独立まで至っている。



目指す理想の農

様々な場所でいろんな農業を目にしてきた朝子さん。現在は、自然栽培(無農薬・無施肥
・耕起あり)で野菜を育てている。そこに至ったのにももちろん理由がある。


1つは、過去に有機農家のもとで野菜を販売していた時。家畜の配合飼料のもととなる遺伝子組換の作物、あるいは作物に残留した農薬やそれを食べて育った家畜の糞尿を堆肥化し育てられたもの 、その他使用した肥料でアレルギー反応を起こしまうような敏感な人を目の当たりにしたこと。


「そんな人たちの不安要素をなくすには?」


たてた問いに対してたどり着いた答えは、シンプルに「何もいれない」というやり方だった。

もう1つは自身が大阪で食養生について学んでいた時。自然農法(無農薬・無施肥・不耕起)の野菜をつくり、身体のことを考えて調理し食べるという機会にめぐまれたこと。そこでは、時間はかかるけれどもゆっくりじっくり育った野菜が、どこか丁寧で滋味深い味わいだった。


「元々弱々しく陰気で泣いてばかりだった性格に、それは生命力を吹き込んでくれるかのようでした」


アフリカで感じたものと似た、あるいはそれ以上の衝撃を感じた。そんなパワー溢れる野菜を育てて届けたい、このような野菜がもっと手に入りやすくなるようにしたい、という思いで自然栽培を始めた。

目指すのは現在行っている自然栽培のさらに先、耕起をしない自然農。その理想に向けて幸か不幸か朝子さん自身の体が安全かどうかの指標となり、より安心できる食べ物を提供するための挑戦は続く。 

(注 自然農法、自然栽培については、さまざまな解釈があるが、ここでは、無農薬・無
施肥栽培であることは共通項として、自然農法では“耕起せず”、自然栽培は“耕起する”とい
う差異点があるという認識のもとで書いています。)


追記

出店時の看板にもある『Takashima natural farm KAIDE with 高島自然農法研究会』 という2つの屋号。混乱を防ぐため少しだけ説明を。

現在、朝子さんが暮らす集落の高島市上開田(カミカイデ)周辺で育てられた無農薬あるいは減農薬の野菜とそれを使った加工品での活動は『Takashima natural farm KAIDE』。高齢化していく地域を盛り上げていきたいとの想いから立ち上げ、現時点では朝子さん1人だが今後広げていくために活動している。

それとは別に『高島自然農法研究会』は、理想とする自然農法を研究しながらお米または野菜を育てるメンバーでの活動。今いるメンバーは、野菜担当の朝子さん以外に会長と副会長を合わせた3人。8月開催以降は高島自然農法研究会の屋号で出店を予定している。


最後に

見た目は少しコワモテで、ガッツリ関西弁。出店者訪問に行く前は少しビビっていましたが、話してみると抱いていた印象とはまるっきり違いました。(勝手なイメージをもってすみません。笑)

(栽培中のごまを見せてもらった)


「自分なんか全然…記事なんか書かんででええよ」とシャイな一面もありつつ、所々”負けず嫌い”が見え隠れする朝子さん。

訪問し話している中で、「ビニール袋ほんまやめたいんすよ。」そう呟かれていましたが、ファーマーズマーケットでも多くの農家さんが抱えている悩み種。この記事を最後まで読んで下さった方、来場の際はぜひエコバックをお持ちください!(忘れた場合は本部横で貸し出ししてます)

くさつFarmers' Market

かつて東海道の宿場町として、多くの人がほっと一息ついた場所”くさつ”。 時代は変わっても、肩肘はらずのんびりとした時間を感じられ、 心の趣くままに愉しめる、そんな場所が残り続けることを。 週末の憩いの場として、温まりある空間をみなさんとともに育めますように。

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