酵母パン まひろ【パン/守山市】

今回訪問したのは、パンを焼き続けて15年、滋賀県守山市の住宅街にひっそりと佇む”酵母パン まひろ”さん。

自宅先に小さな工房を構え、暖簾も看板も出さず、月に2回の工房販売。また、滋賀や京都の複数店舗へ定期的に納品。そして月に1度、くさつFarmers’ Market (以降KFM)へ出店されている。

自分の性に合うかたちで、楽しい!ワクワクする!という気持ちを大切にされているパン屋さん。

ちなみにKFMではいつも開始後1時間半ほどで完売する。


「酵母パンとの出会い」

店主の大部さんが酵母パンと出会ったのは、20代半ばの頃。まだ世の中にインターネットがあまり普及していなかった中で、ホームページ制作のデザイン会社に勤めてられていたこともあり、たまたまネット上で酵母の存在を知ったのがきっかけだった。

1Kの一人暮らしの部屋で、ネットにあった情報を見様見真似でレーズン酵母を起こし、パンを焼いてみたのが酵母パンとの出会い。



「だって膨らむじゃん」

そんな酵母パンとの出会いからしばらく年月が経ち、パン工場で働いたり、友人と一緒にイーストを使用したベーグルを焼きイベントに出店したり。なんだかんだでパンとの関係性は続いていたが、なんだか楽しくない。


「だって膨らむじゃん」


イーストを使用するパンは、通常膨らんで当たり前の世界。安定して同じ品質のパンが焼ける反面、個性は出ずらく、誰がやっても同じような出来になる。一方で、酵母パンは当たり前に膨らまないという難しさがある。なんというか、酵母という”生き物”と触れ合っているような感覚。その面白さを知ってしまった大部さんには少々物足りなかったのだと思う。


筆者も、酵母を起こしてパンを焼いた経験・イーストを使ってパンを焼いた経験、どちらもあるが楽しさが全然違う。自分という存在がパンに影響を与えるからだろうか。

それから、イベント出店時には友人の焼くベーグルと一緒に、少しずつ自分で焼いた酵母パンを置きはじめた。趣味の延長のつもりで出店していたマルシェだったが、


「このパンをうちに納品してくれない?」


突然、滋賀県の健康食品店の店主から声を掛けられた。そのオファーをきっかけに、酵母パン まひろとして開業を決意することになる。



「一度は嫌いになったパン作り」

趣味の一線を超え、パン屋を生業としてからの2~3年。パンを焼くことが嫌いになっていたという大部さん。


「、、しなければいけない。」

つい頭のなかに生まれる言葉。素直に「楽しい!焼きたい!」という気持ちを、義務感が覆い被さっていた。


誰にも強制されていないのに、何かに追われる日々。好きではじめたはずが、いつしか楽しめなくなってしまう。そんな状態を、おそらくこの記事を読んでいる人の多くも、どこかで一度は経験しているのではないかと思う。共に訪問していた事務局メンバーの1人もボソッと、「、、わかるな。」と吐露していた。


「菌との共存」

そんな義務感からどのようなきっかけで、解放されたのか。明確なきっかけは本人も覚えていないようだった。


ただ、酵母というものを相手にしていたこと。人間には、コントロールできない菌の世界。諦めとは異なるなにかを受け入れる気持ちと菌の奥深さを知ったことが大きな影響を与えたのではないだろうか。

「瓶の中で育てた酵母だけがパンの発酵を左右するんじゃなくて、家の中、工房の中、庭の土の中、私の常在菌、周囲の空気中に漂う菌、すべてがバランス良く共存できて初めてパンの発酵が安定するの。」

筆者が以前から大部さんに対して抱いていた"バランスの良さ"の由縁がこの言葉を聞いて繋がった。

こだわりよりも自らの楽しさを優先に。もちろん、パンに用いる素材など、数々のこだわりを持たれている。ただ、こだわりは時に己の首を絞めかねないことを大部さんは自らの経験から学んだのだろう。


"こだわりすぎないこと"

それこそが、酵母パン まひろの1番のこだわりなのかもしれない。

HPから読むことができる大部さんブログでは、菌に対して抱く尊敬の念が感じ取れる。

↓の「菌は地球を救う!という話」は、菌に興味を持っている人にとって、すごく共感することがきっと多いはず。

http://www.koubopan-mahiro.com/2020/01/04/savetheearth/


「最後に」

「死ぬまでパンを焼き続けるんだろうなあ。」と、パンを焼くことが呼吸のように生きる上で当たり前の日常の行為に。

だけれども、今でも常にワクワクするというのだからすごい。

定番人気の菓子パンやサンドイッチ、食パンより、大部さんが休みの日にも関わらず、ついつい焼きたくなってしまう、少し癖のあるライサワー系のパンを、是非この記事を読んだ方におすすめしたい!

「儲けることも大事。でも自分のワクワクがなくなってしまうと、誰もハッピーにならない。菌が教えてくれる」

くさつFarmers' Market

かつて東海道の宿場町として、多くの人がほっと一息ついた場所”くさつ”。 時代は変わっても、肩肘はらずのんびりとした時間を感じられ、 心の趣くままに愉しめる、そんな場所が残り続けることを。 週末の憩いの場として、温まりある空間をみなさんとともに育めますように。

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